【卒業生インタビュー】 川口将司さん(大学/鍼灸学科)

◆ オンライン会報

2022年12月23日

【卒業生インタビュー】川口(かわぐち)将司(まさし)さん 森ノ宮医療大学 保健医療学部 鍼灸学科1期生(2010年度卒業)

ターニングポイントに先生の存在があった

現在、クリニックで看護師として勤務する川口将司さん。

森ノ宮医療大学・保健医療学部 鍼灸学科卒業から12年目の今年(2022年)、『川口鍼灸治療室』の看板を作った。

大学生活の思い出、そして“今”を語ってもらった。

(インタビュー/廣長愉美)

   川口将司さん

大学時代

私は小学校ではソフトボール、中学でバレーボール、高校では山岳部とスポーツを続けてきて、漠然とトレーナー的な仕事をと将来を思い描くなか、鍼灸医療を知りました。地元の沼津では、高校卒業後大半は進学や就職で東京方面に行くのですが、周囲とは違う関西方面に目を向けたら、鍼灸学科のある森ノ宮医療大学が1期生を募集していること知りました。

入学した時は今と全く違って本校舎(イーストポート)1棟だけが建っている状態で、メディカフェ(学生食堂)もなくて食事にはちょっと困りました。

入学時、東洋医学についての知識はほとんどなく、鍼を実際に受けたのも大学の授業が初めてでした。また、解剖学や生理学といった基礎科目、東洋医学系の専門科目の学習はどれも初めて触れるものだったので難しく勉強には苦労しました。1年次末か2年次の始めの頃に、山下 仁先生(現 大学鍼灸情報センター長・教授)から石井昌明先生の治療院で研修する学生を募られたことがあって、私が行くことになりました。なぜ私に決まったのか、卒業後にお酒の席で山下先生に尋ねると、大阪南部の初芝にあった石井先生の治療院へのアクセスが良かったのが私だったと。本当にそうだったのか、冗談で言われたのか…わからないです(笑)。

石井昌明先生は当時、鍼灸院を開業しながら兵庫医科大学で神経科学の基礎研究をしておられて、後に森ノ宮医療大学で非常勤講師もされました。

治療院での研修では、石井先生は鍼灸学の基本理論から治療の方法論まで理路整然と説明され、それまで私の中で何かもやもやとすっきりしない状態だった東洋医学の考え方や鍼灸治療に対する認識を変えてくれました。例えば「鍼がなぜ効くか」とか「気ってなに?」というようなことがストンと腑に落ちたというか、「鍼ってこういうものなのか!」と頭の中の霧が晴れた感じがしました。しかも直に先生の治療を見ながらその作用を実感できたのは本当に大きな学びになりました。

その後、石井先生は基礎研究のために渡米されたので先生の下での研修は終わりましたが、知り合いの先生を紹介していただき、その後も研修を続けていくことができました。

改めて今、石井先生との出逢いは私にとって大きなターニングポイントだったと思います。

キャンパスライフでの一番の思い出はこの「黒帯」です。

私は元々総合格闘技が好きだったので、実家が道場を開いていた友人に声をかけられて柔道部創設に加わりました。

白帯からスタートして4年で黒帯。今も柔道部のメンバーとは仲が良くて連絡し合っています。 

看護師から鍼灸院開設へ

大学卒業後、鍼灸接骨院に就職し勤務鍼灸師として働いていたときに、出張施術で伺った患者さんで、痰の吸引が必要な方がいらっしゃいました。鍼灸師としては痰の吸引行為をすることはできないのでご家族にお願いするわけですが、医療行為上の制限にジレンマというか…鍼灸師として割り切ったらいいのでしょうが、鍼灸だけでどうなのだろう?と感じました。ましてや鍼灸院を独立開業してやっていくことへのビジョンも当時は見えてきませんでした。そいうこともあって、2年後に地元沼津に帰ったのですが、その時、近くの国立病院に附属の看護学校があるのを知り、看護師としての道に進むことにしました。

COVID-19パンデミックは看護師になって3年目の時でした。当時、私は第二次救急病院脳神経外科に勤務していました。勤務していた病院でもコロナ感染症患者専門病棟を設けたり、看護師の異動や患者さんの再配置など、業務内容は大きく変化しました。さらに医療スタッフの感染も発生し自宅待機を余儀なくされたり…スタッフの心身の疲労はかなり大きかったです。そういう経緯もあって私はいつの間にか精神的に限界になっていました。心療内科で休養が必要と診断を受けて退職し沼津に戻りました。その時にしばらくぶりで石井先生に連絡をしました。

石井先生に私自身の状況、鍼灸師として、看護師としての考えなど話すことができました。そしてその後の方向性、具体的には鍼灸院開設の決心をしました。
川口鍼灸治療室看板

これから

最終的な目標は鍼灸師として生活していく事です。今、仕事の割合でいうと、看護師9割、鍼灸師1割というところです。勤務先の業務規則の関係もあり、鍼灸治療は友人知人や家族の範囲に限って行っています。そこから鍼灸へシフトチェンジしていくためには、まず看護師としてのスキルをもっと高め、鍼灸臨床との接点などを具体化、明確化しないといけないと思っています。

鍼灸治療は好きです。患者さんが治っていくのを直に感じるのは何ものにも代え難い喜びです。現在、開業登録も終えて、いつでも本格的に治療できる体制は出来ています。今、スタートに立った気持ちで、自分のペースで進んでいこうと思っています。

昨年は森ノ宮医療大学で開催された校友会講演会に参加して久しぶりに恩師の先生方にお会いしました。今年は参加できなかったですが、来年はできたら参加して私自身の活動を報告したいと思います。