摂食障害 ~東洋医学的所見~

◆卒業生投稿

2019年5月7日

摂食障害 ~東洋医学的所見~

神経性食欲不振症

神経性食欲不振症とは聞きなれない言葉であるかもしれません。これは、いわゆる摂食障害と呼ばれるもので、やせに逃避することで現実のストレスを回避しようと試みます。このような心理的要因から過度に食事制限を行い、著しいやせをきたす疾患です。

そして、食行動の異常や精神症状の他に体重減少による無月経をはじめ様々な内分泌・代謝異常を起こします。特に思春期の女性に多くみられる状態ですが、最近では発症年齢層の拡大や男性例の増加など、多様化してきているのが現状です。

この病は心身症(心の病)であると診断されるケースが多いようです。医療機関へ行けば、抗うつ薬を処方されたり、命の危険がある状態であれば入院治療を実施したりします。また、その原因となったものを解決する為にカウンセリング療法も勧められます。

病と向き合っていく中で難しいところは拒食だけなのか、過食(神経性過食症)だけなのか、又はどちらも発症しているかにより対処の仕方を変えていかなければならないところです。 そして、 発症から完治までの期間が長くなればなるほど、これらを繰り返し、複雑になっていきます。

拒食症

拒食症とは字のごとく食べることを拒むことです。

精神状態として本当は食べることが大好きで頭では食べることばかり考えているのに実際には食べることを拒絶します。また、痩せる為の行動異常(過活動・偏食・自己誘発性嘔吐等)飢餓の反動による食への強い執着が同時に伴います。

食べる量が圧倒的に少ないので栄養不足(水穀の不足)、物質である陰(血・津液)が不足するので陰虚、血虚の状態になります。この津液不足の状態が続くと、胃の釜を燃やす為の命門の火(腎の陽気)が燃えなくなり、脾胃の働きがストップし、ますます食べることが出来なくなります。(そもそも水穀も不足しているので燃やすものも無い状態でしたね。)

そして低栄養状態により無月経を引き起こす確率も高まります。

過食症

反対に過食症とは飲食物を過剰に食べることです。

一般的にイメージされる食べ過ぎとは食べる量が全く違います。 ブラックホールが体内に存在しているのではないかと思うような食べ方です。

食べ過ぎが続くと胃もたれをするというのはイメージがつくと思いますが、これは食べ過ぎることで水穀を消化させる為に腎の陽気を使い、命門の火を燃やし過ぎることで腎虚が進みます。

特に口にするものは甘味(精製された白砂糖や菓子パン等)が多く、甘味は心身の緊張を緩めてくれる半面、腎の固摂も緩める為に精が漏れやすくなり、ますます腎虚が悪化します。 【腎気は骨髄を生み、脳を養う。脳は思考を生み、視力、聴力をつかさどる】 と素問の陰陽応象大論篇第五 では記載されています。

腎気が不足すると脳の働きが低下し、思考力が鈍り、健忘(物忘れ)、倦怠感や疲労感が強まり、耐久力(持久力・集中力)がなくなります。 病が深刻化していくと、更なる症状が増していきます。

心的外傷(トラウマ)より克服した先に見えたもの

これらのリスクを見ただけでも本当に恐ろしい病であり、発症年齢が低くなるほど、発育異常、心身のトラウマ、情緒不安定(鬱症状)、人格の変化、不眠などの症状に耐えられなくなり最終的には自傷行為(嘔吐・過激な運動・リストカットなどの自殺行為・下剤の乱用)へと繋がります。

さらに、摂食障害は心の病としてとらえるだけでなく、脳の異常(思考力の低下や異常)により創り出されたボディイメージの障害(女性らしさへの拒絶)、病識の欠如、母親との関係性(母親への拒絶)が絡みあっているものだと考えられます。

まずはストレスとなった根本原因の部分に気づきを与え、傾聴・カウンセリングが必須になります。そこに鍼灸治療で内側(陰)の部分を整え、心身にかかる緊張を緩和させることが改善の一歩としてお手伝いできるのではないでしょうか。

摂食障害の子供の多くは、知が勝って情緒に乏しく、感覚が育っていない為、極端な拒食でも空腹を感じないといわれています。そして何よりも乳幼児期の母子関係が希薄だった傾向があります。幼少期からの「皮膚感覚の飢餓感」があるのかもしれません。

これらのことから鍼灸治療での切診・触診などによる皮膚や肌に触れるという行為は老若男女問わず失われた皮膚感覚を取り戻すという意味においても大変重要なことだと思います。 この病に限ったことではありませんが、一人で立ち向かうことはとても辛いものです。 誰かに頼り、想いを吐き出すことで救われることがあります。

まだまだ研究段階ではありますが、自身が15年以上この病と闘い、治癒した今だからこそ伝えられることがあります。

どうか自分の身体を愛し、父と母から受け継いだ精を大切にしてください。
世に溢れる情報に振り回されないでください。

そうすることで自分を守り、未来の子供達をも守ることができるのです。

はり灸碧空福森千晶(専/鍼灸学科41期)】